2017年9月2日『日本経済新聞』ヤマハ発の創薬支援、機械が代行 作業時間15分の1

 ヤマハ発動機は1日、製薬会社や研究機関の創薬を支援する事業に参入すると発表した。第1弾としてバイオ医薬などの開発向けに細胞の培養を効率化する装置を発売した。産業用機械で培った技術を応用し、細胞を培養皿に移したり撮影したりといった従来は人手に頼っていた繊細な作業を機械が高速でこなす。成長が見込まれる創薬市場で新たな収益源の育成を目指す。

 細胞培養の支援機器「セルハンドラー」を発売し、8月31日に第1号機を福島県立医科大学(福島市)に納入した。薬効を評価する際に細胞を選択して移し替え、撮影し、培養プレートに載せるまでの工程を担う。

 電子部品をプリント基板に配置する表面実装機で培った、細かい物質を速く大量に並べる技術を応用。細胞を拾い上げてからプレートに載せるまでの作業時間は384個を扱った場合で約27分と、人による作業に比べて約15分の1に短縮できるという。

 価格は標準的な仕様で約6000万円。初年度に5台の販売を計画し、3年後の黒字化を目指す。1日に開いた発表会で、新事業開発本部メディカルデバイスビジネス開発部の引地裕一部長は「創薬のプロセスを大幅に効率化できる」と強調した。

 ヤマハ発は1983年から産業用機械・ロボット事業を手掛け、2016年の売上高は約469億円。全体に占める割合は3.1%と小さいが、表面実装機分野では扱える部品のサイズなどで競争力がある。高い技術を新規分野に応用しようと、11年から創薬向け機器の開発を開始。17年1月には新事業開発本部にメディカルデバイスビジネス部門を立ち上げ、製品開発をしながら事業化を探ってきた。

 従来の化合物由来の低分子で有力な新薬をつくるのが難しくなる一方、バイオ医薬の市場を巡っては、世界の製薬大手やベンチャー企業が投資を続ける。英調査会社エバリュエートファーマによると世界の市場規模は22年に3260億ドル(35兆8600億円)と、16年の2020億ドルから6割強の拡大が見込める。

 ヤマハ発にとっては未知の領域だが、世界初の電動アシスト自転車など同社は小さく生んで大きく育てるビジネスで成長を続けてきた。新しいモノを面白がるDNAが生んだ今回の事業も大きく化けることができるか注目だ。

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